昨夜は、僕の所属する日本センチュリー交響楽団の10月定期演奏会@ザ・シンフォニーホールでした。
昨日のコンサートの、なんと充実していたことか…
1曲目はヴェーベルンがアレンジを施したJ.S.バッハ作曲「六声のリチェルカーレ」。
各管楽器は完全にソリストとしてステージに座しており、また弦楽器も各首席奏者はソリストとしての役割を大きく与えられている。
1つのテーマを1つの楽器が、というのが一般的な編曲のセオリーだが、ヴェーベルンは違う。
1つのテーマを各楽器に配し、全てが繋がった時に初めてそのテーマの形が完成するような、各楽器の音色を最大限に活用(利用ではなく)したオーケストレーションを施している。
例えば冒頭は、ミュートをつけたトロンボーンから始まり、続いてホルン、ラッパへと、交互に出現することで主題を作っている(冒頭は全てミュート)。
これは大変浅はかかも知れないが、いわゆる昨今でも「現代音楽」と呼ばれがちなシェーンベルク・ベルク・ヴェーベルンら新ウィーン楽派の作曲家は
金管楽器のミュート音、ホルンのゲシュトップフト、バスクラリネット、イングリッシュ・ホルン、弦楽器(特にソロ)のグリッサンドなどの音色を、好んで積極的に使っているような印象を持ちます。
(実際に全ての作曲家の全ての作品を聴いたわけではないので、これにはなんのエビデンスもありません)
ただ、今挙げたような楽器の音色を、どちらかと言えば陰鬱な表情を持たせている気がする、そんなイメージがあるというだけです。
大元の主題がそもそも暗いイメージなので、バッハの原曲を仮にハープシコード(又はチェンバロ)で演奏してもそれなりの陰鬱さは出てくると思う。
でも、それをさらに曇らせたかのような、聴いていて「どこに向かうのか」と不安にさせるような、
そんな印象を持っています。
なんだかまるで悪口を言っているような攻めているような口ぶりになっていますが、これはハッキリ申し上げて感銘を受けております。
音の組み合わせから人数の増減、奏法の選択など。
曲を聴いていて脳みそフル回転になる至高の一曲です。
それにしても、上記に書いたような楽器・音色を使うにしたって、マーラーやコルンゴルトは全くと言っていいほど使い方が変わります。
コルンゴルトはひたすら美しかったですね…。
あのオーケストレーションは、確かに直接学んだと言われるマーラーやR.シュトラウスの要素が各所に散見されていました。
そして、これが後にジョン・ウィリアムズに多大なる影響を及ぼすことも納得せざるを得ません。
「まるで映画音楽のよう」と噂される作風ですが、事実、ミュージカルや映画の音楽を純音楽として発表する権利を持っていたようで、手を加えてクラシックのコンサートで演奏されていたようです。
しかし、いわゆる「スクリーンミュージック」というような興業音楽をそのまま転用したわけではなく
「ヴァイオリン協奏曲」という形式に則って書かれているため、純音楽として昇華されているように感じます。
そして、荒井さんの素晴らしすぎるヴァイオリンの演奏によって、作品の芸術性は極致を迎えたと言っても過言ではありません。
センチュリーでは普段、指揮者・楽団員が100%の信頼を置く屈指の名コンマスとして演奏されておりますが
もう一つのお顔として、センチュリー最強首席陣による「ジャズカル」(毎回完売必聴公演!!)では、その圧倒的な技術と感性、そしてアレンジャーとしての能力を遺憾なく発揮されております。
僕もこれまでに2曲ほど拙作を演奏して頂きましたが、「これはどうだ!」「これでどうだ!」という頑張って書いた自分では難しくて大変だと思われるフレーズも
「ふんふふ〜ん♪」
と、鼻歌を歌うかのようにいとも容易くあっさりと演奏してしまいます。(自分の技術と音楽の未熟さが原因なのだろうけれど)
なので、もし次回作品の機会を頂けた暁には
全身全霊を持ってゴリゴリに書かせて頂きたいと思います。
さて、コルンゴルトに影響を与え、天才的なオーケストレーションの技能の持ち主だったR.シュトラウス。
そんな彼が「まるで天上にも昇る思いがした」と大絶賛するフガートを、第四楽章コーダに持つ交響曲。
それが、モーツァルト作曲の交響曲第41番「ジュピター」。
これは、僕の好きなモーツァルト作品の中でもさらに群を抜いてお気に入りの作品でして
(まぁこの曲への賛辞はこの200年間で溢れるほどされてきているとは思いますが)まずは、その必要最低限の編成。
- フルート1
- オーボエ2
- ファゴット2
- ホルン2
- トランペット2
- ティンパニ
- 弦五部
それから、各楽章のテーマのシンプルさ。一度聴いたら忘れられないものばかりです。
そして最後に、終楽章コーダの天国的なフガート(フーガの要素がある曲の一部を指したりする用語)。
いつも必ず本番だけなのですが、このフガートに突入すると、鳥肌が立ちます。
フガートの始まりを告げるのは、ホルン・ファゴット・チェロが奏でるジュピター音型なのですが、僕はこの英雄的な響きのする楽器の組み合わせが大好きです。
それに確か、R.シュトラウスも好んで使う組み合わせではなかったかな?
それから、自分が入るまでの10小節の休みの間、弦楽器の奏でる全ての主題を全て聞こうとして耳を澄ませると
脳がスパークします。
非科学的な表現になってしまうかも知れませんが、本当に宇宙にいるような、宇宙を感じさせるような、そんな感覚に陥ります。
本当に楽しかった。終演後、ロビーでのお見送りの時にも、お話ししたお客様から「楽しかった」とのお言葉を頂けて、嬉しい気持ちでいっぱいです。
もっと良い演奏を!という大きな励みになりました。
さて!
来月の日本センチュリーの定期演奏会のラインナップはこちら。
・キラール/オラヴァ
・カプースチン/ピアノ協奏曲第5番
・リムスキー=コルサコフ/交響組曲「シェエラザード」
の3曲。
指揮は我らがマエストロ飯森範親氏、ソリストには川上昌裕氏をお迎えしての公演です。
「20世紀ポーランドを代表する作曲家ヴォイチェフ・キラール。数多くの映画音楽を手がけたことでも知られ、1992年に封切られたコッポラ監督の「ドラキュラ」や2002年に話題になったポランスキー監督の「戦場のピアニスト」を通して、知らず知らずのうちにキラールの音楽に触れている方も多いと思います。オラヴァは、弦楽オーケストラのために1988年に作曲されました。センチュリーの弦楽セクションの機動力が最大限に発揮できる作品です。
キラールの5歳年下のニコライ・カプースチンは自らもピアニストとして活躍した作曲家です。クラシックとジャズを融合したスタイルは、多くのファンに愛されています。ピアノ協奏曲は6曲あり、今回は日本初演となる第5番が選ばれました。ソリストにはカプースチン演奏の第一人者、川上昌裕を迎えます。あらゆるジャンルのカプースチンの作品を日本で紹介してきた川上は、名教師としても知られていて辻井伸行を始め素晴らしいピアニストを世に送り出しています。
プログラムの後半にはリムスキー=コルサコフの交響組曲「シェエラザード」が置かれました。ペルシャの「千夜一夜物語」に登場するヒロイン、シェエラザードは全編に渡って、美しいヴァイオリン独奏で描かれます。コンサートマスターの松浦奈々の語りは、一瞬たりとも聴き逃すことが出来ません。華やかな管弦楽が皆様をアラビアンナイトの世界に誘います。」
※当団HPより引用
引用元:http://www.century-orchestra.jp/concert/no230/
僕個人としては、カプースチンがとっても楽しみです。
大学時代にファゴット(!)の同級生が弾いてくれたカプースチンのピアノピースを聞いて、衝撃を受けました。
(彼がファゴット奏者なのにピアノがバリバリ弾けるのも、試験前日に伴奏をお願いしたのに完璧に弾けるのも大変驚きましたが)
ジャズとクラシックの融合が果たしてピアノ協奏曲という土台の上でどう果たされるのか、ワクワクです!
チケットご入用の方は、お気軽に僕までお申し付け下さいね(^^)
〜本日の名言〜
「全ての芸術は音楽に嫉妬する」
フリードリヒ・ニーチェ(ドイツの哲学者)